- 7月 1, 2025
子どものアトピー性皮膚炎 小児科or皮膚科?

にわ小児科小児アレルギーエデュケーター(PAE)中野看護師がお答えします
もしかしてアトピー性皮膚炎・・・小児科?皮膚科?どちらを受診したらいいのかな?
毎日痒そうにボリボリ搔いている、朝起きると枕カバーやシーツに血が付いている…良くしてあげたい!でも、皮膚のことだから皮膚科?それとも子どもだから小児科?困ってしまいますよね。お母さんお父さんの困ったを少しでも楽にできるようにお話しますね。
アトピー性皮膚炎ってなに?
そもそも症状に対して付けられた名称で、「悪くなったり良くなったりを繰り返す痒みを伴う湿疹を主とする疾患で、患者の多くは『アトピー素因』をもつ」とされ、国内での診断基準は日本皮膚科学会のガイドラインで「乳児では2か月以上・幼児では6か月以上続く湿疹」と定義されています。『アトピー素因』とは①気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎・結膜炎など自身が持っていたり、家族がこれらの疾患を持っている。②アレルギーの免疫反応で出てくることが多いIgE抗体を作りやすい体質を指しています。
原因はなに?皮膚で何がおきてるの?
皮膚のバリア機能の低下がおきています。バリア機能とは皮膚の大切な働きの一つで、外界から不必要な刺激や異物(細菌、ダニの死骸やふん、食物)の侵入を防ぎ、内側の水分の喪失を防ぐ機能のことを言います。下の絵を見てください。左側は健康な皮膚でしっかりバリア機能を果たしています。右側のドライスキン(アトピー性皮膚炎)はどうでしょうか?皮膚の一番上角層の部分に注目してください。表面がめくれあがって皮膚に隙間があいています。この隙間から異物が侵入し炎症を起こし、内側からは水分がどんどん出て乾燥します。これがアトピー性皮膚炎で起こっていることです。

もう一つ注目してほしいところがあります。ドライスキン(アトピー性皮膚炎)の方は知覚神経の先端が皮膚の表面にまで伸びています。バリア機能が低下すると体は異物の侵入を早くキャッチできるように知覚神経を伸ばします。すると少しの刺激にもかゆみを感じ、常にボリボリと搔いてしまうのです。皮膚を搔いてしまうと更に角層が乱れて隙間を作り症状がどんどん悪化してしまうのです。
治療は必要?どんな治療するの?
湿疹を認めたらできるだけ早く治療を始めたほうがいいです。早く治療を始めることで症状の改善も早く、合併症(とびひや水いぼ)のリスクも少なくなり、食物アレルギーの予防にもつながります。何より本人の苦痛をやわらげることができます。標準治療※はスキンケアと薬物療法(主としてステロイドの外用薬)です。ステロイド以外の外用薬や注射薬の使用など、重症度に合わせた治療を行います。
※科学的根拠に基づいて有効性と安全性が確立され、現在利用できる最良の治療法
小児科?皮膚科?結局どちらを受診したらいいの?
どちらを受診しても治療はできます。ただし治療は長期になることが多く、症状にあわせて外用薬の種類や塗布間隔の調整が必要です。子どもの皮膚を見るだけでなくしっかり触って治療してくれる医師を探してください。アトピー性皮膚炎は検査等で状態を判断するのではなく、触診で見極めをしますので豊富な知識と経験が重要です。結論は小児科でも皮膚科でも治療はできますが、子どもの場合は・・・
子どものアトピー性皮膚炎は小児科を勧めます
アレルギーマーチという言葉を聞いたことがありますか?アレルギーマーチとはアレルギー体質の人が成長するにつれて、様々なアレルギー疾患を順番に発症していくことです。乳児期にはアトピー性皮膚炎や食物アレルギー、学童期になると気管支喘息やアレルギー性鼻炎など年齢によって発症する疾患が変わってきます。乳児期にアトピー性皮膚炎を発症し、皮膚のバリア機能低下があると皮膚から食物の成分が侵入し、食物アレルギーを発症することがわかっています。子どもの場合はその場の治療だけでなく未来を見据えた総合的なアレルギー診療がとても大切なのです。アレルギー疾患は子どもの成長発達にも大きく影響をあたえてしまいます。本来の力を発揮できず大人に向かってしまう子もいます。将来アレルギー疾患で困らないようにその子本来の力を発揮できるように、小児科でのアトピー性皮膚炎治療を勧めます。

治療のゴールは?
大きなゴールは薬を使わなくても湿疹が出ず、すべすべのきれいな肌になる。ですが、アトピー性皮膚炎は悪くなった良くなったりを繰り返すことが特徴の疾患です。治療が長期になる方もいます。途中で諦めずに最後まで治療ができるように小さな目標を作ったり、悩みや喜びを共有しながら治療が続けられるように一緒に頑張ります。アトピー性皮膚炎で困っている・・・ぜひ小児科を受診ください。