子どもの感染症

定期予防接種で感染を防ぐことができる感染症
(VPD:Vacctine Predict Disese)

麻しん(はしか)

麻しんは、麻しんウイルスによって引き起こされる感染症です。感染力が非常に強いことで知られており、一度かかると一生免疫が持続すると言われています。39℃をこえる発熱や咳、鼻水、発疹が主な症状で、肺炎や中耳炎、さらに重症化すると脳炎を合併する可能性があります。平成27年4月以降、海外からの渡航者の感染とその感染者から波及した症例のみとなりました。

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風しん(三日はしか)

風しんは風しんウイルスによって引き起こされる感染症です。こちらも麻しん同様、感染力が非常に強いことで知られています。感染すると約2~3週間後に発熱や発疹、リンパ節の腫れなどの症状が現れます。風しんはかかっても無症状であることもありますが、成人で発症した場合は小児より重症化することがあります。また、妊婦が妊娠初期に風しんにかかると生まれてくる子どもに難聴や白内障、先天性心疾患をもつ可能性があるので注意が必要です。

水痘(水ぼうそう)

水痘は水痘帯状疱疹ウイルスによって引き起こされる感染症です。発熱とかゆみのある水疱が全身に広がります。重症化すると肺炎や髄膜炎、脳炎など様々な症状を起こします。水痘も風しんと同様、成人で発症した場合は重症化することがあり、妊娠13~20週までに妊婦が水痘になると可能性は低い(1~2%以下)ですが、生まれてくる赤ちゃんに障害や奇形が起こることがあります。

感染性胃腸炎(ロタウイルス:ワクチン有、ノロウイルス:ワクチン無、など)

感染性胃腸炎は原因となるウイルスによって症状が異なります。ロタウイルスについてはほとんどの子どもが5歳までに感染すると言われており、発熱と嘔吐から症状が出始め、水のような下痢(便は白っぽくなることもあります)が繰り返し出るようになります。ロタウイルスは定期予防接種で重症化を防ぐことができます。ノロウイルスについても同様、症状は発熱、嘔吐、下痢など似ていますが子どもがノロウイルスに感染すると嘔吐の症状がひどくなる傾向があります。脱水症状を起こしやすいため、経口補水液などでこまめな水分補給を行いましょう。当院ではお子さんの状態によって、プリントを用いて具体的な経口摂取指導を行います。

おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)

おたふくかぜはムンプスウイルスによって引き起こされる感染症です。発熱と耳やあごの下(耳下腺、顎下線)が腫れてくることが主な症状です。1回かかると抗体ができますが、重症化の恐れもあるため1歳と年長になったら予防接種を行いましょう。耳下腺部の細菌感染などによって起こる「反復性耳下腺炎」とは診察のみで判断するのが難しいため、経過観察して改善の程度で判断したり、採血でムンプスウイルスの抗体がついているか否かで判断することもあります。まれに無菌性髄膜炎(頭痛・嘔吐が首が固くなる)や精巣炎・難聴を合併することがあり、特に難聴は治療がほぼ効かない(治りにくい)ため、唯一の対応は「予防接種」となります。当院でも接種可能です(自費となります)。

百日咳

百日咳は百日咳菌によって引き起こされる感染症です。特有のけいれん性の咳発作を特徴とする病気です。風邪症状の後に比較的乾燥した咳が止まらない状態が長期間続く場合は百日咳を疑います。迅速検査で即日診断が可能です。予防接種を打っていない生後すぐの赤ちゃんはかかると死に至ることもあるため、定期予防接種(四種混合)は必ず行ってください。百日咳の感染予防効果は小学校入学を過ぎると切れてくるため、家族に乳幼児がいる場合などはお子さん自身の感染を防ぐ目的で年長の学年で(小学校入学1年前~)、麻疹風疹(MR)ワクチン2回目(公費)と一緒におたふくかぜ(自費)と四種混合または三種混合(共に自費)を接種されることをお勧めします。

一般的に夏に流行する病気

ヘルパンギーナ

口の中にできる水疱性の発疹(水ぶくれ)が特徴の病気です。そのほか、突然高熱がでたりや喉の痛み、口や喉の粘膜の赤みなども伴います。コクサッキーウイルスA群が主な原因ウイルスですが、種類が多くありますので、1シーズンに何回もかかることが多いです。
迅速検査ではわからないため、身体所見(特に口腔内の水疱)で診断します。発熱がなく、経口摂取が出来るようになれば登園可能なことが多いです。大人にかかると重症化するので注意が必要です。

手足口病

口の中の粘膜や手のひら、足の裏、足の甲や陰部などに水疱性の発疹が現れることが特徴の病気です。そのほか、ヘルパンギーナ程ではないですが発熱も伴うことがあります。ヘルパンギーナと同様、1シーズンに複数回かかることもあり、迅速検査が出来ないため、身体所見(手足と口回りの発疹)で診断します。発熱がなく、経口摂取が出来るようになれば登園可能なことが多いです。大人にかかると重症化するので注意が必要です。

咽頭結膜熱

咽頭結膜熱はプール熱ともいい、「アデノウイルス」が引き起こす夏に流行することが多い風邪の一種です。39度以上の高熱が数日継続します。発熱のほかに、のどの痛みや結膜炎による目の痛みやかゆみが特徴です。ヘルパンギーナ、手足口病と3つまとめて三大夏風邪ともいわれています。最近は夏だけでなく春先から流行することも増えてきました。迅速検査で診断可能ですが特に治療薬が無いため、解熱鎮痛薬や経口摂取指導などの対症療法を行います。登園は症状が無くなって2日経過してから(解熱後3日目)許可となります。

水いぼ(伝染性軟属腫)

水いぼは全身に1~5mm程度の表面がつるっとしたいぼができる病気です。アトピー性皮膚炎や湿疹のあるお子さんには感染のリスクが高いと言われています。かゆみがあるため自分でかきむしることで他の部位へ波及することも多いです。特効薬が無いため保湿を行い、水いぼのある皮膚の状態を良くしたり、かゆみや赤みが強い場合は一時的にステロイド外用薬を使用することもあります。皮膚科では摘除(ピンセットでつまんで取る)や凍結療法(液体窒素を直接患部に塗布する)がありますが治療に際し痛みを伴います。ほとんどが数か月~1,2年で減少、治癒する疾患ですので多くなければ経過をみることが多いです。他の人へは接触(プールのビート板やタオルの共有など)で感染することが多いです。当院はスキンケアとイソジン消毒療法をお勧めしています。詳細は診察時におたずねください。

とびひ(伝染性膿痂疹)

とびひは赤みから始まり、小さな膿のたまった水ぶくれができた後、その水ぶくれがやぶれたりただれたりして、厚いかさぶたができる病気です。我慢できずかきむしると症状が広がってしまいます。当院では外用抗生剤に聞きにくい耐性菌に対しても効果が期待できる塗り薬やステロイド薬の併用、内服抗生剤などを使用し効果的に治療を行っています。

腸管出血性大腸菌感染症(O157等)

腸管出血性大腸菌感染症はO157などの腸管出血性大腸菌による感染症で、水のような下痢や発熱、腹痛、嘔吐が特徴の病気です。症状がひどくなると死に至ることもある病気です。

RSウイルス感染症・ヒトメタニューモウイルス感染症

RSウイルス感染症は0~2歳位のお子さんに多くみられる感染症です。以前は冬に多く発症していましたが、近年は初春~夏にかけても流行がみられています。鼻水と痰や咳が多く出て、呼吸が睡眠が障害されます。風邪症状ですので発熱も認めます。特徴的なのは、①「年齢が若い(小さい)方が重症化する」②「夜に重症化する」ことと③「発症(熱や咳・鼻汁が多くなる)から5~7日目が一番しんどくなる」ことです。
2~3歳以上のお子さんであれば発熱や鼻水、せきなどいわゆる風邪のような症状ですが、生後3-6か月未満の乳児が感染すると無呼吸発作を起こしたり重症化することもあります。
「兄/姉は感冒症状(咳・鼻水)のみだが、下の子(赤ちゃんは)息がしんどそうで哺乳が出来ない状態で受診される」ケースが多いです。
ヒトメタニューモウイルス感染症は、RSウイルス感染症と①~③の傾向は同じですが、発症年齢が比較的高く比較的軽症ですむ場合が多いのが特徴です。
治療は該当ウイルスに対する薬剤が無いため、「対症療法(感冒薬:咳き止め・痰切り、解熱鎮痛薬やご自宅での鼻汁吸引など)のみ」です。
>当院では、RSウイルスとヒトメタニューモウイルスを1回で同時検査できるキットを用いて1回の鼻腔粘膜採取で両方の診断が可能です。

一般的に冬に流行する病気

溶連菌感染症

溶連菌感染症は発熱とのどの痛み、そしていちご舌と呼ばれる舌に苺のようなぶつぶつや体に細かい発疹ができることが特徴の病気です。3歳までのお子さんは熱が上がりにくい傾向にありますが、38~39度の熱が出ることもあります。
治療は抗生剤の内服(10日間か5日間)です。
家族内感染を起こしやすいため、お子さんが陽性となった場合は咽頭痛を認めるご家族全員の検査(成人の場合は内科受診)を実施し陽性の場合は除菌(抗生剤内服)をお勧めしています。登園再開は「除菌(抗生剤内服)開始後24時間後に解熱継続」(抗生剤内服して解熱後2日目から)となります。
可能性は低いですが、感染後~1か月前後程度までに尿をつくる「腎臓」に炎症が起こることがあります。当院では、「感染確認3週間後に起床時の尿を持参いただき検査を実施」しております。検査の当日は必ず予約をして頂き尿検査結果報告を受けていただくようお願い致します。

インフルエンザ

インフルエンザは毎年秋~冬に流行する感染症です。お子さんによっては40度近く発熱することもあり、鼻水や咳、全体の倦怠感も伴います。突然大声を出す、窓を開けて外に飛び出すなど異常行動を起こす可能性があるため、感染後48時間は注意が必要です。登園・登校再開は発症(発熱)後5日を経過した上で解熱4日後(小学生以上は解熱3日後)となります。

マイコプラズマ肺炎

マイコプラズマ肺炎は小学生のお子さんに多い病気です。かわいたような咳と鼻水、発熱が主な症状になり、肺炎を引き起こすことが多いです。当院では抗原検査(感染早期の反応をみる)が可能です。抗生剤内服で治療を行います。

その他の感染症

突発性発疹

ヒトヘルペスウイルス(水ぼうそうやヘルペスとは異なる)6型・7型の初感染で起こることが多く、38度以上の高熱が朝から晩まで4-5日程度続いた後、解熱のタイミングで赤い点状の発疹が現れることが特徴の病気です。初めての発熱と高熱の割には比較的機嫌が良いのが特徴です。まれに熱性けいれんを起こすことがあるため、注意が必要です。
治療薬は特に無いため、対症療法(感冒薬:咳き止め・痰切り、解熱鎮痛薬)を行います。
高熱が継続するため採血を行う事もあり、その場合はウイルス感染タイプ(白血球:WBCが軽度上昇~基準値内と炎症反応:CRPが軽度上昇)を示します。

りんご病(伝染性紅斑)

りんご病は微熱や風邪のような症状が出てから両頬に赤いぶつぶつ、腕や足などに淡いぶつぶつが出現する病気です。 両頬が赤くなってりんごのように見えるため、りんご病と呼ばれます。治療薬は特に無いため、対症療法(感冒薬:咳き止め・痰切り、解熱鎮痛薬)を行います。